前回の投稿に引き続き、日本最大級のデザインカンファレンス『Designship 2018』のトークセッション内容をまとめます。

ヤマハ株式会社 デザイン研究所所属のプロダクトデザイナー、柘植 秀幸さん(@YOSHIYUKI_TSUGE)による『ライブにイノベーションを起こすUXデザイン』。
ヤマハの技術を用いて、音楽の遺産を未来の世代に残す取り組みであるライブの真空パック化についてご紹介いただきました。
柘植 秀幸さんのあいさつ
世の中には「見たくても見れないライブ」が数多くあります。
チケットが取れない、遠くて行けない、解散してしまった、亡くなってしまったなど理由は様々です。
その代替手段としてこれまであったのはライブCDやDVD、Youtubeなどですが、そこから得られる迫力や感動は実際のライブで得られる体験と大きくかけ離れています。
それらの問題を解決するために「ライブの真空パック」をコンセプトにアーティストやミュージシャンの活き活きとしたライブを、ありのままに保存/再現する新しい仕組みデザインしました。
このプロジェクトに掛ける思いや、コンセプト、実現する仕組みをご紹介させていただきます。(Designship公式サイトより)
全ての人にライブの音を届けたい
世の中には見たくても見られないライブが無数にあります(チケットが取れない、遠くて行けない、解散してしまった、亡くなってしまったなど...)。
今あるの代替手段として実在するのが
- ライブCD
- ライブDVD
- YouTubeなどでのライブ映像
- ライブビューイング
等ですが、中でもライブビューイング市場が近年大幅に伸びてきています。
現状のライブビューイングの課題としては挙げられるのが、圧倒的な臨場感不足。
カメラが定点ではなく切り替わったり、音の再現性も低かったりと、正直実際のライブの臨場感とは比べ物になりません。
そこで、実際のライブ時の奏者の演奏データを記録し、そのデータをライブビューイングの会場に置いた楽器一つ一つに読み込ませ実際に演奏させ、さらに定点カメラからの奏者のライブ映像を映画館のスクリーンに投射することで、実際のライブと同じような体験を作るというプロダクト、すなわちライブの真空パック化を考案したそうです。
ライブの真空パック化のために開発したプロダクトがこちら、「Real Sound Viewing」です。

楽器の後ろにスクリーン置いて、Real Sound Viewingで楽器を実際に演奏し(楽器のスピーカー化)、更に奏者の映像を重ね合わせる。
この手法により、生音と映像と楽器のシンクロも相まって臨場感がかなり上がり、二度と見ることができないはずの伝説のライブを「体感」できるとのこと。
Real Sound Viewingのプロトタイプの実演はこんな感じでした。
確かに、いくら良いスピーカーを使えど生音とは比べ物になりませんね(動画ではわかりにくいですが…)。
音楽の遺産を未来の世代に残すのが柘植さんの目標。
絵画など有形文化遺産と同じように、音楽を無形文化遺産に保存するのが夢だと語ってくれました。
雑感
例え同じ曲であっても、一ライブで行なったその瞬間の演奏を違う「音楽」として捉えているその思想が素敵だなと感じました。
その音楽の遺産を技術で残すという取り組みも素晴らしいですね。
デモンストレーションの再現度にも驚かされました。
もちろん生音だし、「再生」と「再現」では迫力が全く違います。
もしかしたら本当に、見れないライブはない時代がくるかも…?
ただ、会場の臨場感とか張り詰めた空気感とか、観客の熱気も含めてがライブの体験だと思うので、そこもうまく再現できたらいいですね。
いつの日か、RSRの会場で味わった指の先まで鳥肌が立つような体験を、ライブビューイングで味わえる日がくるといいなぁ。。